僕が吃音者として一番苦しい思いをしたのが仕事関係でのことだ。
小学生の時に吃音が原因でいじめられた時も、彼女が出来て食べ物をオーダーしたり、水族館の入場券を買う時も苦しかったが、どちらも僕にどもりグセがあることを知っているので情けなくはあったけど、どうにもならない恥ずかしさはなかった。
ところで仕事関係で苦労した記憶としては主に2つの系統に別れられる。
就職前と就職してからの悩みである。
今日の回顧録は就職活動中、すなわち就職前について振り返ってみたい。
吃音者の就職先の選択肢が狭まる理由
今でもあるんだろうか?
僕らの頃は、就職活動のルールとして、会社訪問前とか会社訪問後に電話で面接の確認とか、入社試験のお礼をするのが一般的だった(気がする)。
そこで、問題となるのが、どういう言葉を使うか。
ただでさえ吃音者にとって電話なんて緊張するのに、入社試験を受ける、もしくは受けた会社に電話をするなんて、もう気持ち的には、ゲテモノ料理を目の前にしたかのように
ムリ、ムリ、ムリ、ムリ
こんな感じだった。
とはいえそんなことを言っていても始まらないので、意を決して受話器を握りしめるわけだが、どうにかしてどもりにくい単語を選択しつつ電話をしたものだ。
例えば僕なら母音(あ行)がどもりやすいので、通常なら
「先日はありがとうございました。」
というところを、わざわざ
「先日は<どうも>ありがとうございました。」
のように、<どうも>をつけたりしたものだ。
「御社の」という部分も「貴社の」と言い換えたりしたものだ。
ちなみに「貴社」は主に文章向きの言葉なんだそうだ。確かその当時も調べていたと思うが、
・・・お、お、お、お、御社
となるよりも
・・・貴社
と一度でどもらずに言えたほうが、その当時の僕はマシだと思っていた。
と、ここまでは、自分が就職試験の前後で電話をするときの話だったが、何件か電話をしているうちにふと思ったのだ。
その何気なく思ってしまったことが、僕の就職先の選択肢を少なくした。
母音が発音しにくいということは・・・
企業に電話すると、当たり前だけど必ず受付なりの人は、会社の名前を名乗る。
例えば、「株式会社結城物産」という会社があったとすれば、
「はい、結城物産です」
「お待たせしました、結城物産でございます」
のように電話に出るわけである。
ということは・・・
そう、僕が会社に入った場合、電話にでるときには否応なく自社の名前を言わなくてはいけないし、もし仮に言わなかったら相当怒られるw
はい、その時歴史が動いた!じゃないが、その時に思ったこと。。。
母音から始まる会社には絶対に入らないほうがいい!!(汗)
いや~、これ、本当に入社前に気づいておいてよかったわ。
もし気づかずに入社していたら、おそらく五月病でやめていたと思う。
だって、新入社員で緊張している時に電話に出て、当時は社名がすんなりでてくる自信はなかったから。
さらに言えば、これは就職してから気づいただが、自社を名乗るのは電話に出た時だけではない。
当然、こちらから電話をかける時も普通は自社名を名乗ってから、自分の名前という流れになるだろう。
そう考えると、とにかく毎日会社に行くだけでも憂鬱になっていただろうな~
特に僕が一番最初に入った業界は建設業で、資材その他の手配関係で新入数年は、外部に電話をかけることが多かったから。。。
当時は、とにかく母音で会社名が始まる会社には就職しないと決めていて、そのことで損をしている気はしなかった。
でも今はなんとなく選択肢が狭まったことは自分の可能性を狭めている気持ちもないではない。
ただし、吃音症がほぼほぼ克服できた今は、これからの人生を貪欲に、そして前向きに生きようと思う。