ヒトには誰しも掘り起こされたくない過去というものが存在すると思う。
僕も例外ではなく、それはある。
それは・・・「オカマと呼ばれていた」過去だ。
オカマと呼ばれていたきっかけ
おそらくだが小学校の上る前から吃音者だったのだと思う。
その後、小学3年の夏までは、自分はどもりグセがあるということは認識していたものの、吃音者として嫌な思いをした記憶はない。
状況が一変したのは引っ越してからである。
東京都下から埼玉の中核都市に引っ越したのが小学3年の夏。
そこで僕ははじめて吃音者として嫌な思いをすることになる。
みんな、吃音者に対する典型的なからかいとして、僕のマネをするのである。
それでも、完全にいじめつくされるということはなく、少し嫌な思いをするくらいだったので、当時、幼いながらも、
「どうやったらどもりでからかわれなくなるだろう」
ということを考えたんだと思う。
その結果、思いついたのがモノまね。
しかも、一番力を入れたのが松田聖子のモノまねだった。
男性タレントのモノまねもやったんだと思うが、とにかくみんなに笑ってもらえればいじめられないというばかりに、一番うけのいいモノまねを本能的に研究していった結果、女性のタレントのモノまねが多くなった。
小泉今日子、石川秀美、中森明菜、などなど当時の、いわゆるレコード大賞に出てくるような女性歌手のモノまねはすべてやった。
なかでも、河合奈保子と松田聖子の掛け合いのようなものは秀逸だったと思う。
いや、そんなことはどうでもいい。
とにかく女性タレントのモノまねをすることにより、吃音が原因でいじめられることは激減したのだが、その代償は小さくなかった。
普段から女ことばを使うとさらに笑ってもらえるということがわかった僕は、1日のうちのかなりの時間を、いまでいうオネエ言葉で過ごしたのだ。
その結果、ついたあだ名が「オカマ」
オカマが本流だが、他にも
・オカマン
・カマちん
・オカマちゃん
など、数パターンある呼ばれ方をして小学時代を終えた。
繰り返される中学時代
ところがだ。
公立の小学校であるかぎり、そのまま公立の中学校に通えばみんな顔なじみだ。
つまり中学校へ入学しても、ニックネームはそのまま。。。
そればかりか、他の小学校からも合流があり、小学校から知らなかったやつからもオカマと呼ばれるはめに。
当然、それはクラスメートにとどまらない。
野球部でも呼ばれるし、生徒会の行事にさんかしてもオカマは他のヒトからもオカマだ(汗)
それにしても、これはどうかと思うのが、体育祭の応援団の副団長を務めた時。
応援団という女子禁制な領域でまでオカマと呼ばれることはさすがに抵抗があったというものだ。
まあ、他の人たちは微塵も僕の懸念など理解してはくれていなかったのだろうが。。。
成人式で味わった衝撃
その後、高校に行って、ようやくオカマという奇異なニックネームからは開放された。
半ば自分でも癖になってしまったのではないかという問題も杞憂に終わった。
ああ、もちろん吃音に関しての問題ではなくて、オカマグセが自分についていはしなかったかという問題で。
ということで、相変わらず吃音の癖は抜けなかった高校時代だが、オカマには別れを告げた。
そして大学に入ってからは違った意味で奇異なニックネームがついてしまったが、オカマと呼ばれることはなかった。
ということで、オカマとは完全決別したようには見えたのだが・・・
世間はそれほど甘くなかった。
それは成人式での出来事。
朝、会場の市民会館で何処かで見たような顔が。
中学時代野球部で一緒だったS氏だ。
そのS氏、開口一番でこれ。
「おう、オカマ、元気だった!?」
これは嫌がらせでも何でもないのは重々も承知。
それでも僕の中では、ここ数年味わったことのない衝撃が。
その時改めて思い出した。
(俺って昔、オカマって呼ばれてたんだ・・・)
あの時のインパクトは、18歳の時、その市民会館の目の前のカラオケボックスでバイトしているMちゃんに振られたことよりも衝撃的だったな~
念の為に顛末を記しておけば、40歳を超えた今、もちろんオカマなんていう呼び方をする人間は僕の周りにはいない。