吃音者は自らのどもりを治すために様々な工夫や努力をしていると思う。
かく言う僕も、いろいろな対策を考えてきたわけだが、今回、フジテレビの月9ドラマ『ラブソング』に出演している藤原さくらの演技を観ていて、
「あ~、自分もやってたな~」
というのを思い出した。
どもりを治すためにとっていたその奇異な行動とは?
刺激を与えるとどもりが治る?
結論から言ってしまうと、藤原さくらがどもり対策でやっていたのは、体のどこかを自分の拳や手のひらの土手で打撃する方法だ。
専門用語的には随伴運動というものに該当するようだが、僕がやっていたのは、この写真のような感じ。
だいたい恥骨から腰骨の部分にかけての硬い部分を手のひらの土手の部分で打撃する。
タイミングは最初の文字を発するとき。
例えば、「おはようございます」と言いたいなら
「お」の文字を発するのと同時に、腰骨の当たりを手のひらの土手で打つのである。
この打撃する箇所だが、実は最初は腰骨の部分ではなくて、心臓(胸)の部分でやっていた。
喉に近いほうがなんとなく刺激が伝わった気がしたからだ。
なので自らこの発声法につけた名前が「オランウータン打撃法」なのだ(笑)
もちろん、今となってはどもりを治すというステージまでは程遠いメソッドだったのだが、何もやらないよりはどもりが少なく感じた。
そして遂には進化版まで発明したのである。
オランウータン打撃法の進化版
基本版は、話したい単語の一番最初の文字を発すると同時に、胸や腰骨の部分を打撃することによって一発で話してしまうのだが、これだと一発で言葉が出てこないことが多かった。
先ほどの例で言えば、「おはようございます」と発音するので、「お」の部分で1回打撃するのがオランウータン打撃法の基本版。
しかし、「お」が一回で出ない場合は当然「お、お、お、おはようございます」となるわけだが、この場合いきおいで「お」の回数だけ打撃をしてしまうのだ。(連続で胸を叩いているさまはやっぱりオランウータンそのもの)
だったら、一発目の「お」を発話する前からリズムを取ってしまえばいいのではないかと、もちろん胸や腰骨を打撃をして。
マクドナルドでオレンジジュースを頼むとしたら、カウンターに隠れて腰骨の部分を、1,2と叩いて3回目の打撃と同時にオレンジジュースの「お」を発話するイメージだ。
それでもうまくいかない時は、発話できると思うタイミングまで、5回~10回ほど叩きながらタイミングを待つということもやった。
イメージ的には、両脇で縄跳びを持っている中に、タイミングを伺ってくぐり入るような感じである。
縄跳びの輪の中に入るにはリズムが必要なので、よくあるのが首を立てに振ったり、目を縄を追うようにくるくる回して入るタイミングを伺う経験は誰しもしたことがあると思う。
どもりを治すためにリズムを取って発話するときも一緒だ。
ちなみに、個人的な経験では、発話するタイミングを待ちながらリズムを時には、
ゆっくりと1、、2、、3、、
と取るのではなく
小刻みに、1,2,3,・・・
のように取ったほうがスムーズに語頭が発話できたような気がする。
しかし、どもりを治す、つまり吃音克服までの道のりは、いま改めて思うと地獄のような日々だったことが思い出される。
まだ中学生だったあの日、所沢市のK駅前のマクドナルドの女子高生のバイトのお姉さん。
まさか僕が、あなたから見えないカウンターの裏側で、小刻みに腰骨を叩いていたなんて知るすべもなかっただろうと思う。