40歳を過ぎた頃まで僕を苦しみ続けてきたどもりグセ。
どもりを悩むことがなくなった時点ははっきりと覚えているのだが、いつからどもり始めたのかという部分に関しては記憶が曖昧だ。
どもっているというはっきりとした記憶があるのは中学の時に生徒会の選挙管理委員長を引き受けて、朝礼で話した時。
いまでも僕が壇上に立つと、1,000人超の全校生徒が、どこからともなく“クスクス”という曇った笑いが出たことをはっきりと覚えている。
しかし、この出来事は自分の中で最大級の出来事だったからこそ深い記憶に刻まれているのであって、実際のどもりはじめというのは、かなり先のことだ。
引っ越した時にはすでに
次なるどもり始めのポイントと考えられるのは、小学3年の夏にあった引っ越しの時。
それまでも転校生っていじめられるという話は、幼ながらにもテレビドラマなどで情報を仕入れていた。
しかし自分がそれを実際に経験するとは・・・
自分のどもりが周りの人から見ると特異なものなのだと始めて気づいたのが、引っ越した時だったと思う。
とにかく、僕がどもったことを復唱された。
「あ、あ、あ、あ、あ、あした」
「こ、こ、こ、こ、こ、こんにちは」
この頃の情けなさや恥ずかしさは、僕の吃音人生史上、「ああ、自分はダメ人間なんだ」と初めて認識した出来事だったような気がする。
ということで、自分の吃音が世間から受け入れられない、吃音=悪、というレッテルが貼られていることに気づいたのは小学3年の頃だった。
しかし、いつからどもり始めたのか?という問いに対しては、やはりこの時点ではない。
それでは一体、いつからだったのだろう?
3歳の頃のモノマネがきっかけ?
正直なところ、僕自身、いつからどもり始めたのかのはっきりとした記憶はない。
母親に聞いてみたところ、母の中では僕が3歳の頃、急にどもり始めたというのだ。
なんでも当時近所で一緒に遊んでいた男の子が、どもりグセがあったようで、「きっとあなたも、その子のマネをしたんでしょう」とのこと。
この質問は確か大学の就職の時に就職の面接に失敗し、半ば自暴自棄になって母に詰問同然に当たった時のもの。
母としては息子を憐れむとともに、ココロの何処かで「決して私が原因ではない」ということをアピールしたかった意図もあったのかもしれない。
で、いつからどもり始めたのかという真相は?
自分の中で、はっきりと認識しているのは小学3年(8歳)の頃だが、おそらく引越し前の小学校に上がった頃にはもうどもっていた気がする。
こんなところである。
人は自分に都合が悪いことは、自らの脳に<可及的速やかに消し去れ>という司令を出すそうだ。
長年吃音症に悩み続けていた僕は、きっと「僕はいつからどもり始めたんだろう」なんていう記憶は未来永劫記憶から捨て去りたかったに違いない。