もちろんマクドナルドにオレンジジュースがないとか、吃音者は虫歯になりやすいから甘いジュースがのめないとか、そういった類の悩みではない。
他の吃音者のことはわからないが、同じ50音順の中でも、発音がし易い音と、どもってしまいやすい音があるという話。
まず吃音がでる音
まず100%吃音が出てしまうなというのが、僕の場合で言うと母音。
すなわち、「あ、い、う、え、お」から始まる文章や単語だ。
なのでタイトルにもある通り、マックに限らずだが、飲み物でオレンジジュースをオーダーするのは僕にとっては非常にハードルが高い部分だ。
母音で始まる音が苦手なので、当然夏場に、アイスコーヒーやアイスティーもオーダーできないのだ。
それでもマックやファミリーレストランなどの飲み物の種類が豊富な場所はいい。
友達などに怪訝な顔をされるのがカフェ。
「航汰、マジ?この熱いのにホットかよ」
真夏でもホットコーヒーをオーダーする僕を見て、友達は彼女は驚愕する。
実際に、エアコンさえ効いていれば真夏でもホットコーヒーが飲みたいという気持ちもあるのだが、それにしても僕が真夏の喫茶店でホットコーヒーをオーダーする理由の80%ほどは吃音が深く関係しているのは間違いない。
友人や彼女、そして店員の前でどもった姿を晒すくらいなら、たとえ真夏でも温かい飲み物を飲むことは厭わない。
発音するときの創意工夫
とはいえ、やっぱり冷たい飲み物は飲みたいものだ。
僕にとって一番楽なのはドリンクバー
なぜか僕にとって、吃音が出にくいのが濁音なのだった。
なので、「ドリンクバー」と頼むのはそれほど勇気や決断がいらない。
どもり始めても、最高3回位でどもりは止まる傾向にあった。
すわわち、「ド、ド、ドリンクバーください」程度。
これが前出のオレンジジュースになると、
「オ、オ、オ、オ、オォォウォレンジジュ、ジュ、ジュースください」
ここでのポイントは、オが言えない時の工夫。
なぜかわからないがウを先につけて貯めるようにして、次に小さい母音をつけながら発するとかろうじて出てきたりする。
その結果、オレンジは、ウォレンジと発音するようになるのだ。
そして見逃せないポイントは2次吃音発現。
2次吃音発現などという言葉はどこで調べても出てこない。僕が勝手につけたネーミングだ。
つまり、前の文節の吃音がひどくなると、普段はそれほど苦労しないで発せられるうしろの単語もどもってしまう現象だ。
この場合はオレンジでどもってしまったため、それ単体で発する場合は比較的どもることの少ないジュースでもどもってしまっている。
いま考えると滑稽だけど、飲み物や食べ物のオーダー一つとっても、当時はかなりエネルギーを使ったよな~
裏を返せば、こんな悩みを抱えて、よくぞ彼女なんかいた時代があったなと。。。
きっと当時の彼女もいろいろ悩んでいたに違いない。
(こんな人といつまで付き合うんだろう。。。私の人生、こんな人と一緒でいいのかな)
と・・・
当時を思い出すと、まるで地獄絵だった吃音の悩み。
ただ人に味わえない悩みを持つことで、天はライティングという仕事を僕に与えてくれた。
あの頃思い悩んだことは決して無駄ではなかったのだと。
いま改めてそう思う。