僕がはじめて人と比べてうまくしゃべれないことに気づいたのは小学校の低学年の頃だった。
正確には覚えていないのだが、小学3年夏に引っ越す前のことだったと思うので、おそらく小学1年とか小学2年の頃だったと思う。
最初にうまくしゃべれないと気づいた時には、対して疑問に感じなかった。
なので、うまくしゃべれないことが病気かどうかなんて、まったく気にしていなかった。
はじめてうまくしゃべれないことが病気なのかもと意識させられたのが、小学3年で引っ越した直後の事だった。
優しかったY君があんなに変わるなんて・・・
引っ越した直後はうまくやっていたのだ。
そう、帰る方向を聞かれて同じ方向だとわかったので、一緒に帰ったのが偶然にも真向かいに住むことになったY君。
1週間位はほぼマンツーマンで学校のこと、近所ことなどを教えてくれた。
親切だった。
ところが1週間を過ぎた頃から、彼の僕に対する態度が豹変した。
最初は軽く
Y君:「結城くんの話し方おかしいね。なんでうまくしゃべれないの?」
といわれるだけだった。
ところが、次第にみんなと笑いながら、僕の真似をするようになったのだ。
つまり、どもりの真似である。
僕のどもりの症状がでると
Y君:「お、お、お、お、お、おはよう」
などとからかわれるように。。。
最初は僕も笑ってごまかした。
もしかしたらY君も最初はイジメているつもりなんか全然なかったのかもしれない。
ところがモノまねを始めてから1週間ほど、つまり引っ越して2週間が経過した頃に僕にとっては生涯忘れられない悲しい事態が勃発した。
Y君がこんなことを言い始めたのだ。
それは、学校から僕らの家の方に向かった運動公園の中をショートカットしている時のことだった。
Y君:「ママに聞いたけど、結城君は病気だって」
僕:「え?なに?」
Y君:「結城くんの、こ、こ、こ、こ、ことか、うまくしゃべれないのは病気の一種なんだってさ」
僕:「・・・・・」
Y君:「だから、モノまねやめなさいって言われた」
それまでの僕は家でもどこでも、うまくしゃべれないことについて病気だなんて言われたことがなかったから、正直なところショックだった。
今となっては色々な病気の知識があるが、当時は病気と言ったらお腹が痛いとか頭が痛い、つまり痛くならない病気なんて知らなかったからだ。
家に帰るなり僕はお袋に聞いた。
僕:「お母さん、僕、病気なの?」
「病気なんかじゃないよ」
お袋は、まず誰がそんなことを言ったのかを聞いてきた。
僕はまさか真向かいに住むY組んだとは言えず、学校で言われたと言い張った。
お袋は、病気じゃないよと言ったが、うまくしゃべることができないことに気づいていた僕は、病気かどうかはともかくとして、どう考えても普通じゃないことには気づいていたので納得は出来なかった。
そんな悶々とした中で、しばらく学校へ通うことに。。。
吃音と病気とイジメと
Y君はしばらくは静かだった。
モノまねもしなくなったのだ。
ところが、ここはハッキリとは覚えていないが、しばらく経った頃、また始まったのである。
僕:「こ、こ、こ、」
と、どもり始めると「こんにちは」と言い切らないうちに
Y君:「こ、こ、こ、こ、こ、コケッコッコー」
とまくし立てる。
周りにいたクラスメートからは、どっと笑いが湧き上がった。
僕は苦笑いをするしかなかったよ、幼いながらに・・・
子供だから周りの人間が笑ってくれるとさらにエスカレートする。
からかいが、イジメに変わる瞬間だ。
(Y君がこんなことをしていること、Y君のお父さんやお母さんはしらないんだろうな・・)
イジメが起こると必ず議論になるのが、いじめるほうが悪いかいじめられるほうが悪いかということ。
どもりで病気病気とイジメられてモノマネされた時でも、いじめられた側に問題があるのだろうか?
今考えると僕もY君が気に入らないことをしたのかもしれない。
うまくしゃべれなくていじめられた場合にも問題があるか?
そこだけを見れば、いじめられた僕には絶対に問題はないと断言できるが、その他のことをY君に対してしたかどうかが自分ではわからないいま、僕にも絶対に問題がなかったとは100%は言い切れない自分がいる。