160705kakugo

吃音克服のきっかけとなった話をしようと思う。

吃音克服の直接のきっかけは>>この教材<<なので、いま思い出しているのはどちらかというと吃音克服を決意した話とでもいえようか。。。

職人が安全書類を書くのと一緒くらい吃音者は・・

あれは40歳になろうとしていた夏だった。

ビジネスの恩師でもあるKさんとその仲間たちと東京神田という場所で勉強会をやったあとの懇親会での話。

最初は10人くらいで飲んでいたのだが、最後は5人になった。

そのグループでは私は比較的若い方で、いつもいじられ役だった。

それでもみんな大人。

勉強会での報告などで吃音がでても、それについては誰もいじる人はいなかった。まあ当然といえば当然である。

で、その勉強会に参加している人というのは、いわゆるコンサルタント的な人が多く、実践報告ではいつもセミナーの話などになった。

かくいう僕も、建設業界、宿泊業界からの華麗なる転身?でライターを始めてしばらく経った頃だったので、文章の書き方などを話してみてはどうかという打診がちょぼちょぼと出始めていたのだ。

昔からしたら信じられない展開だ。

とはいえ、僕の仕事は決して話すことではない。文章を書くことだ。

そう考えると、ライターという仕事は天職と言えなくもない。いや天職だ。

人は天職を身につけると、その特技を人に伝えるという役割を持つ。

しかし、僕に関して言えば、人前で話すのがある意味嫌なので書くという仕事を選んだのだ。

それは建設業界にいた頃、ある意味職人たちと同じ心境だった。

当時、安全に関する書類が毎日盛りだくさんあったのだが、彼らは書くことが嫌で職人になったという側面も強い。

Kさんとの懇親会の日、僕は職人のことを思い出していた。

人前で話すということは本当に吃音者にとっては苦痛。。。

というのが、その日までの勉強会での僕のポジションだった。

ところが、その懇親会の席でKさんがこんなことを言い放ったのだ。

Kさん:「結城くんもそろそろセミナーを開こうよ」

踏ん切り

いよいよ来たかと思った。

いや、人に気遣いがあるKさんが、僕が吃音者だということを知らないはずはない。

それなのにあえてKさんは、僕に人前で話せと言っているのだ。

Kさんは私にとって、ビジネスの先生だ。その先生がやれといったら、これはもうタイミングなのだと思った。

でも、どうしても踏ん切りがつかない。

軽くごまかすようにして、その場をしのいだ。

カミングアウトで確信した自分のミッション

結局、その夜はニュージーランドから一時帰国していた仲間がいたこともあり、朝方まで飲んだ。

みんなうつろな目で帰りのエレベーターに乗り込む。

朝方5時、8月の終わりでだいぶ日が短くなってきたものの、うっすらと空は白んできた。

もう始発電車は走っている。

みなそれぞれの帰りの経路を確認したあと、Kさんが再び僕に声をかける。

Kさん:「で、結城はいったいいつセミナー開催するの?」

不意の質問で少し戸惑ったものの、とっさに出た言葉がこれだ。

僕:「いやいや、言っての通り吃音グセがあるのでセミナーは無理ですよ~」

Kさん:「大丈夫だよ~。期待してるよ、じゃまた!」

僕が、この仲間の中でハッキリと自分が吃音者だと宣言したのはこれが初めての事だった。

みんな大人だから、僕にどもりグセがあることなど百も承知している。

なので、その時まではあえていう必要もなかった。

それなのにとっさに答えた時の吃音者カミングアウト。

いま考えると、吃音者であることを告白して、Kさんの反応を確かめたかったんだと思う。

その答えが「大丈夫だよ~」だったのだ。

だとしたら大丈夫!

どれだけ吃音が出てしまっても話そうと、その時心に決めた。

とはいえ、少しでも吃音が出なくなればそれに越したことはない。

再度真剣に吃音に向き合っている時に出会ったのが>>この教材<<なわけだが、では完全に吃音が治ったのかといえば、100%どもらなくなったわけではない。

でも、少なくとも、(母親に確認した所によれば)小学校に上がる前から抱えていた吃音を自分の中では克服したと言える程度になったことに違いはない。

文書を書くことの素晴らしさを口頭で伝えるということに後追してくれたKさん。

いつまでも僕の中では師匠である。